とっとりバイオフロンティアセミナーのご案内

日程:令和6年11月28日(木)16:00-17:30 現地・オンライン(Zoom)開催
会場:とっとりバイオフロンティア1階研修室(現地会場は先着15名)
受講料:無料

講師:槻木 恵一 氏(特定非営利活動法人日本唾液ケア研究会理事長、神奈川歯科大学副学長)

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 唾液の最も重要な役割は、進化の視点から見ると、乾燥からの防御にあると考えられます。水中生活から陸上生活へと移行する中で、環境の大きな変化が起こり、特に乾燥は粘膜面に細菌やウイルスが定着しやすく、感染のリスクを高めます。このため、唾液は乾燥を防ぐことで感染を予防する機能を持ち、これが崩れることでさまざまな疾患を引き起こすことがあります。

 近年の研究では、口腔の健康が全身の健康に密接に関連していることが明らかになり、口腔の問題が口内だけにとどまるという考えはもはや過去のものとなりました。特に歯周病は、糖尿病・脂肪肝・大腸がんなどの生活習慣病と深い関連があり、口腔の健康を保つことの重要性が高まっています。しかし、欧米とは異なり、日本ではまだ歯科医院は「病気になってから行く場所」という認識が強く、全身の健康を意識して予防的に通う人は少ないのが現状です。さらに、口腔の健康を最上位の存在として防御する唾液の重要性に対する理解も広く浸透していないのが現状です。

 そこで私たちは、唾液が口腔の健康を支える重要な役割を果たしていることに着目し、唾液の機能を「量」だけでなく「質」にも焦点を当て、“唾液力”という言葉で一般に普及させる活動を行ってきました。これまでに、IgA抗体、BDNF、ラクトフェリン、エストロゲン、PSAなど、唾液の新たな機能に関して明らかにしています。
 特に、口腔は感染の入り口ですが無防備ではなく、唾液中のIgA抗体が24時間粘膜免疫として守っています。このIgA抗体は、口腔内の感染防止に重要な役割を果たし、唾液中のIgAが減少すると、上気道感染症や虫歯のリスクが高まります。IgAが多いほど感染予防効果が高いことが知られていますが、私たちは「腸活」によって唾液中のIgA抗体が増加することを発見し、この腸と唾液腺の関連性について「腸-唾液腺相関」を命名し研究を進めています。

 新型コロナウイルスのパンデミックを経て、感染症予防に対する国民の関心が高まる中で、唾液中のIgA抗体が注目され、IgA抗体検査を提供する企業も増加しています。しかし、最近の私たちの研究では、口腔清掃が不十分だと唾液中のIgA抗体の機能が阻害されることが明らかになりました。したがって、IgA抗体の量を測定するだけでなく、IgA抗体が効果的に働くための口腔環境を整えることが重要です。今後の唾液IgA抗体検査の可能性も含め、唾液の役割について、私の考えを紹介していきたいと思います。

本セミナーは事前申込制となっています。参加ご希望の方は開催当日の正午までにこちらの参加フォームよりお申し込みください。


連絡先:バイオフロンティア推進室(担当: 森山)